問29 運行管理者は、荷主からの運送依頼を受けて、次のとおり運行の計画を立てた。この計画を立てた運行管理者の判断に関する次の1~3の記述のうち、適切なものには解答用紙の「適」の欄に、適切でないものには解答用紙の「不適」の欄にマークしなさい。なお、解答にあたっては、<運行の計画>及び各選択肢に記載されている事項以外は考慮しないものとする。(※法改正により一部改変)
(荷主の依頼事項)
A地点から、重量が5,500キログラムの荷物を11時30分までにD地点に運び、その後戻りの便にて、E地点から5,250キログラムの荷物を18時30分までにA地点に運ぶ。
<運行の計画>
ア 乗車定員2名で最大積載量6,250キログラム、車両総重量10,930キログラムの中型貨物自動車を使用する。当該運行は、運転者1人乗務とする。
イ 当日の当該運転者の始業時刻は6時00分とし、業務前点呼後6時30分に営業所を出庫して荷主先のA地点に向かう。A地点にて荷積み後、A地点を出発し、一般道を走行した後、B料金所から高速自動車国道(法令による最低速度を定めない本線車道に該当しないもの。以下「高速道路」という。)に乗り、途中10分の休憩をはさみ、2時間40分運転した後、C料金所にて高速道路を降りる。(B料金所とC料金所の間の距離は240キロメートル)その後、一般道を経由し、D地点には11時00分に到着する。荷下ろし後、休憩施設に向かい、当該施設において11時50分から13時00分まで休憩をとる。
ウ 13時00分に休憩施設を出発してE地点に向かい、荷積みを行う。その後、13時50分にE地点を出発し、一般道を経由し往路と同じ高速道路を走行し、その後、一般道を経由し、荷主先のA地点に18時10分に到着する。荷下ろし後、営業所に18時50分に帰庫する。営業所において業務後点呼を受け、19時00分に終業する。
1.B料金所からC料金所までの間の高速道路の運転時間を、制限速度を考慮して2時間40分と設定したこと。
2.当該運転者は前日の運転時間が9時間00分であり、また、当該運転者の翌日の運転時間を8時間50分とし、当日を特定の日とした場合の2日を平均して1日当たりの運転時間が改善基準告示に違反していないと判断したこと。
3.当日の運行における連続運転時間の中断方法は改善基準告示に違反していないと判断したこと。
問29 正解 適2 不適1,3
1.適切でない。「B料金所~C料金所間(240km)を、設定された運転時間(2時間40分)で走行できるか」を考えるが、「車両総重量が8トン以上又は最大積載量が5トン以上の貨物自動車」が高速道路の本線車道を走行する際の最高速度は時速80kmとされており、本運行で使用する自動車も該当する。
240kmの距離を時速80kmで走行する場合、少なくとも3時間(240km÷80km/h)かかるので、B料金所~C料金所間(距離240km)の運転時間を2時間40分と設定したことは適切ではない。
なお、本問については、「走行距離」や「平均速度」から正誤判断することも可能だが、計算が若干複雑になってしまうため、あまり推奨しない。
2.適切。(運行当日を特定日とした場合の2日を平均した1日当たりの運転時間は、改善基準に違反していない)
運転時間は、2日を平均し1日当たり9時間、2週間を平均し1週間当たり44時間を超えてはならない。
1日当たりの運転時間は、特定の日を起算日として前後2日ごとに区切り、その2日間の平均を算出し、「特定日の前日と特定日の運転時間の平均」と「特定日と特定日の翌日の運転時間の平均」が、ともに9時間を超えている場合は改善基準に違反していることになる。(※「どちらも9時間を超えていない場合」や「どちらか一方だけが9時間を超えている場合」は違反にはならない)
本問の場合、運行前日の運転時間が9時間、当日の運転時間を合計すると9時間10分であり、翌日の運転時間は8時間50分なので、運行当日を特定日とすると、「特定日の前日と特定日の運転時間の平均」が(9時間+9時間10分)÷2=9時間5分、「特定日と特定日の翌日の運転時間の平均」が(9時間10分+8時間50分)÷2=9時間であり、「特定日と特定日の翌日の運転時間の平均」については、9時間を超えていないので、改善基準に違反していない。
3.適切でない。(連続運転時間の中断方法は、改善基準に違反している)
連続運転時間は、4時間を超えてはならない。
連続運転時間が改善基準に違反しているかどうかは、運転開始後4時間以内又は4時間経過直後に、30分以上の運転の中断をしているかどうかで判断する。
なお、この「30分以上の運転中断」については、少なくとも1回につき10分以上(※10分未満の場合、運転中断の時間として扱われない)とした上で分割することもできる。
また、「運転の中断」とは、「運転を行っていない時間」のことなので、休憩だけでなく荷積みや荷下ろしの時間も含まれる。
つまり、“運転時間の合計が4時間を超える前に「合計30分以上の運転中断」をしなければならない(=「合計30分以上の運転中断」をした時点で連続運転がリセットされる)”ということであり、「合計30分以上の運転中断」をする前に運転時間の合計が4時間を超えてしまった場合、改善基準に違反することになる。
以上を踏まえ、往路と復路の運転状況を整理すると以下のようになる。
往路~復路の最初の運転中断(荷積み30分)までは、4時間を超える連続運転は見られないので、改善基準に違反していないが、それ以降(復路の2回目の運転以降)の運転状況を見ると、〔運転2時間20分(一般道1時間+高速道路1時間20分)⇒運転中断10分(休憩)⇒運転1時間50分(高速道路1時間20分+一般道30分)…〕となり、「30分以上の運転中断」をする前に運転時間の合計が4時間を超えている(=4時間10分) 。したがって、連続運転時間が4時間を超えることになり、改善基準に違反している。