運行管理者試験過去問題 - 平成28年度第2回(貨物)-解答・解説-
平成28年度第2回運行管理者試験 -貨物-(H29.3実施)-解答・解説-
問24 正解 適1,4 不適2,3
2.適切でない。業務後の点呼における「当該業務に係る事業用自動車、道路及び運行の状況」については、異常の有無にかかわらず、運転者に対して報告を求めなければならない。
3.適切でない。業務前及び業務後の点呼は、原則、対面で実施しなければならないが、運行上やむを得ない場合は電話その他の方法によることも認められている。
「運行上やむを得ない場合」とは、遠隔地で業務を開始又は終了するため、当該運転者が所属する営業所において対面点呼が実施できない場合等をいい、車庫と営業所が離れている場合及び早朝・深夜等において点呼執行者が営業所に出勤していない場合等は「運行上やむを得ない場合」には該当しないことから、電話その他の方法よる点呼を行うことはできない。
問25 正解 適4 不適1,2,3
1.適切でない。他の自動車に追従して走行するときは、常に「秒」の意識をもって自車の速度と停止距離に留意し、前車との追突等の危険が発生した場合でも安全に停止できるような速度又は車間距離を保って運転するよう指導する。
「停止距離」とは「危険を認知してから停止するまでに走行した距離」のこといい、空走距離(=危険を認知しブレーキ操作を行い、ブレーキが効きはじめるまでに走行する距離)と制動距離(=ブレーキが効きはじめてから停止するまでに走行する距離)とを合わせた距離のことである。つまり、問題文にあるような「制動距離と同じ距離の車間距離」では、急ブレーキの際に前車に衝突する危険がある。
2.適切でない。前半の記述が不適切。事業者は、体質的にお酒に弱い運転者のみならず、すべての運転者を対象として、酒類の飲み方等について指導する必要がある。
3.適切でない。運行管理者は、異常気象その他の理由により輸送の安全の確保に支障を生ずるおそれがあるときは、乗務員等に対する適切な指示その他輸送の安全を確保するために必要な措置を講じなければならない。本肢のように、運転に関わることをすべて運転者の判断に任せてしまうことは適切ではない。
問26 正解 適2,4 不適1,3
1.適切でない。適性診断は、運転者の運転行動や運転態度が安全運転にとって好ましい方向へ変化するように動機付けを行うことにより、運転者自身の安全意識を向上させるためのものであり、運転に適さない者を運転者として選任しないようにするためのものではない。
3.適切でない。たしかにヒューマンエラー(=人的ミス)によって起きている交通事故は多いが、交通事故の再発を防止するには、発生した事故の調査や事故原因の分析が重要かつ有効である。したがって、事故惹起運転者に対する社内処分や再教育に特化した対策を講ずることが最も有効とはいえず、発生した事故の調査や事故原因の分析よりも事故惹起運転者や運行管理者に特別講習を確実に受講させることを中心とした対策に努めることは適切ではない。
問27 正解 A4 B1 C6 D3
ア (A=ウェット・スキッド現象)とは、雨の降りはじめに、路面の油や土砂などの微粒子が雨と混じって滑りやすい膜を形成するため、タイヤと路面との摩擦係数が低下し急ブレーキをかけたときなどにスリップすることをいう。これを防ぐため、雨の降りはじめには速度を落とし、車間距離を十分にとって、不用意な急ハンドルや急ブレーキを避けるよう運転者に対し指導する必要がある。
イ (B=スタンディング・ウェーブ現象)とは、タイヤの空気圧不足で高速走行したとき、タイヤに波打ち現象が生じ、セパレーション(剥離)やコード切れ等が発生することをいう。これを防ぐため、タイヤの空気圧が適当であることを、日常点検で確認するよう運転者に対し指導する必要がある。
ウ (C=フェード現象)とは、フット・ブレーキを使い過ぎると、ブレーキ・ドラムやブレーキ・ライニングが摩擦のため過熱することにより、ドラムとライニングの間の摩擦力が低下し、ブレーキの効きが悪くなることをいう。これを防ぐため、長い下り坂などでは、エンジン・ブレーキ等を使用し、フット・ブレーキのみの使用を避けるよう運転者に対し指導する必要がある。
エ (D=ハイドロプレーニング現象)とは、路面が水でおおわれているときに高速で走行するとタイヤの排水作用が悪くなり、水上を滑走する状態になって操縦不能になることをいう。これを防ぐため、日頃よりスピードを抑えた走行に努めるべきことや、タイヤの空気圧及び溝の深さが適当であることを日常点検で確認することの重要性を、運転者に対し指導する必要がある。
問28 正解1,2,4
3.適切でない。これはドライブレコーダーの説明である。デジタル式運行記録計とは、瞬間速度・運行時間・運行距離などの運行データを電子情報として電気的に記録するものである。
問29 正解 適1,2 不適3
1.適切。「車両総重量が8トン以上又は最大積載量が5トン以上の貨物自動車」が高速道路の本線車道を走行する際の最高速度は時速80kmとされており、本運行で使用する自動車も該当する。
時速80kmで3時間30分走行した場合、80km/h×3.5時間=280kmの距離を走行することができる(又は、240kmの距離を時速80kmで走行した場合、240km÷80km/h=3時間で走行することができる)ので、D料金所~E料金所間(距離240km)の運転時間を3時間30分と設定したことは適切である。(※「平均速度」から正誤判断することも可能だが、240km÷3.5時間≒68.6km/hと計算が若干複雑なため、あまり推奨しない)
2.適切。(勤務終了後の休息期間は、改善基準に違反していない)
トラック運転者の休息期間については、勤務終了後、継続8時間以上の休息期間を与えなければならない。
本問のトラック運転者の休息期間は、前日が9時間(前日の終業19時~当日の始業4時)、当日が9時間20分(当日の終業18時10分~翌日の始業3時30分)であり、両日とも8時間以上であるため改善基準に違反していない。
3.適切でない。(連続運転時間の中断方法は、改善基準に違反している)
(※連続運転の考え方については、問23のウの解説を参照のこと)
復路の2回目以降の運転状況を見ると、「運転2時間5分(一般道路20分+高速道路1時間45分)⇒運転中断15分(休憩)⇒運転2時間5分(高速道路1時間45分+一般道路20分)…」となり、運転4時間以内に30分以上の運転中断をしていないため、改善基準に違反している。
問30 正解5
※本問のような「事故の再発を防止する対策として最も直接的に有効なもの」を選ぶ問題については、問題で問われている「最も直接的に有効な内容のもの」を考えるより、逆に「事故の原因とは直接的に関係ない内容のもの」を削除していった方が解答しやすい。
ア 当該事故を起こした運転者は、事故当日、改善基準に違反した連続運転を行っており、また、事故日前1ヵ月間の勤務において、連続運転時間や1日の最大拘束時間等について改善基準に違反した運行を複数回行っていたので、疲労が蓄積した状態であったかもしれない。したがって、本肢のような指導を行うことは、同種事故の再発防止対策として有効とも考えられるが、事故の概要からは、事故の直接的な要因が運転者の疲労によるものであるとは読み取れず、同種事故の再発防止対策として、直接的に有効であるとはいえない。
また、後述の解説により肢ウ、オ、キは、明らかに同種事故の再発防止対策として直接的に有効であるとはいえないので、選択肢の組み合わせから判断することも可能である。
ウ 本事故は漫然運転や脇見運転による追突事故ではない。したがって、同種事故の再発防止対策として、直接的に有効であるとはいえない。なお、「漫然運転」とは、“運転以外のことを考えていた”“ボーっとしていた”など、運転以外の動作の伴わない前方不注意による運転のことをいう。
オ 本事故は偏荷重による積載や運搬中の荷崩れが要因で生じた事故ではない。したがって、同種事故の再発防止対策として、直接的に有効であるとはいえない。
キ 当該事故を起こした運転者は健康診断を年2回受診しており、運転者の疾病が本事故の要因となったわけでもない。したがって、同種事故の再発防止対策として、直接的に有効であるとはいえない。
以上により、同種事故の再発を防止するための対策として、最も直接的に有効と考えられる組合せは、イ・エ・カ・クとなり、肢5が正解となる。