運行管理者試験過去問題 - 平成30年度第1回(貨物)-解答・解説-
平成30年度第1回運行管理者試験 -貨物-(H30.8実施)-解答・解説-
問24 正解 適2,3 不適1,4
1.適切でない。採用時に提出させた履歴書が、法令で定める運転者等台帳の記載事項の内容を「すべて網羅」していればまだしも、概ね網羅しているということは一部の事項については記載されていないということなので適切ではない。
なお、法令上、「履歴書を運転者等台帳として使用すること」を禁止する規定はないが、運転者等台帳は一定の様式であることが求められており、仮に、法令で定める運転者等台帳の記載事項をすべて網羅している履歴書であっても、運転者ごとに異なる様式の履歴書を運転者等台帳とすることは適切ではない。
4.適切でない。運行管理者は、運転者等が運行指示書を携行した運行の途中に、運行経路に変更が生じた場合には、運行指示書の写しに変更内容を記載し、これにより運転者等に対し変更内容について適切な指示を行い、運転者等が携行している運行指示書に変更内容を記載させなければならない。したがって、運転者に携行させていた運行指示書を帰庫後提出させ、運行管理者自ら当該変更内容を記載することは適切ではない。
問25 正解3,4
1.適切でない。個人差はあるものの、体内に入ったビール500ミリリットル(アルコール5%)が分解処理される目安は、概ね4時間とされている。なお、「アルコール5%のビール500ミリリットル」は、純アルコールに換算して20グラム、これはアルコール摂取量の基準とされる量であり、アルコールの「1単位」という。
2.適切でない。他の自動車に追従して走行するときは、自車の速度と停止距離に留意し、前車との追突等の危険が発生した場合でも安全に停止できるような車間距離を保って運転するよう指導する必要がある。
「停止距離」とは「危険を認知してから停止するまでに走った距離」のことであり、空走距離(=危険を認知しブレーキ操作を行い、ブレーキが効きはじめるまでに走った距離)と制動距離(=ブレーキが効きはじめてから止まるまでに走った距離)とを合わせた距離をいう。
安全な車間距離の目安は、一般的に「停止距離以上の距離」とされており、「制動距離と同程度の車間距離」では、急ブレーキの際に前車に衝突する危険がある。
問26 正解 適1,2 不適3,4
3.適切でない。深夜業(原則として午後10時~午前5時までの間における業務)を含む業務に常時従事する者に対しては、当該業務への配置換えの際及び6ヵ月以内ごとに定期健康診断を受診させなければならない。
4.適切でない。脳血管疾患(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血など)は、MRI検査やCT検査などで早期に発見することが可能だが、健康診断では脳そのものの疾患を診る項目は設定されていないため、定期健康診断で発見することは容易ではない。
問27 正解 適2,3,4 不適1
1.適切でない。(2)が適切ではない。四輪車を運転する場合、二輪車は速度が実際より遅く感じたり、距離が遠くに見えたりする特性がある。
問28 正解 適2,3,4 不適1
1.適切でない。適性診断は、運転者の運転行動や運転態度が安全運転にとって好ましい方向へ変化するように動機付けを行うことにより、運転者自身の安全意識を向上させるためのものであり、運転に適さない者を運転者として選任しないようにするためのものではない。
問29 正解 ア2 イ1 ウ1
ア.B地点とC地点の間の運転時間
運転時間は「距離÷時速」で求めることができるので、B地点とC地点の間の運転時間は、150km÷45km/hを計算すればよいが、以下いずれの解法でも解答可能である。
〇時短解法(とにかく簡単に正解を出す)
150km÷45km/hを計算すると「3.333…」なので、答えは「3時間〇分」であることがわかる。各選択肢を見ると肢イのみ3時間台なので、正解は肢イとなる。
〇詳細解法(正確に計算する)
150km÷45km/hを計算すると3と15/45、つまり「3と1/3」時間であり、1/3時間は20分なので、B地点とC地点の間の運転時間は3時間20分となる。
また、45km/hを分速(45km/h÷60分=0.75m/分)に変換し、150km÷0.75m/分=200分=3時間20分と計算することも可能である。
なお、以下のように「A営業所からB地点までの運転時間」から解答する方法もある。
A営業所からB地点までの運転時間は、20km÷30km/h=2/3時間=40分であり、A営業所の出庫時刻が7時30分なので、B地点の到着時刻は8時10分であることがわかる。B地点では30分間の荷積みを行っているので、B地点の出発時刻は8時40分であり、C地点の到着時刻は12時なので、B地点とC地点の間の運転時間は、8時40分~12時で3時間20分である。
イ.1日当たりの運転時間の違反の有無
(※1日の運転時間の考え方については、問23の肢2の解説を参照のこと)
運行当日の運転時間については、以下いずれかの計算により求める。
〇合計計算(運転時間の合計のみを出す)
A営業所の出庫時刻が7時30分、帰庫時刻が19時30分なので、その間の時間(いわゆる拘束時間)は7時30分~19時30分=12時間である。
このうち、運転以外の時間が、B地点での荷積み30分+C地点での荷下ろし20分+C地点での休憩1時間+D地点での荷積み30分+E地点での荷積み20分=2時間40分なので、運転時間は12時間-2時間40分=9時間20分となる。
〇個別計算(個別の運転時間を合計する)
運転時間を合計すると、A営業所~B地点:40分(設問アより)+B地点~C地点:3時間20分(設問アより)+C地点~D地点:1時間(30km÷30km/h)+D地点~E地点:3時間(90km÷30km/h)+E地点~A営業所:1時間20分(40km÷30km/h)=9時間20分となる。
したがって、前日の運転時間が9時間、当日の運転時間が9時間20分であり、翌日の運転時間は8時間50分を予定しているので、「特定日の前日と特定日の運転時間の平均」が(9時間+9時間20分)÷2=9時間10分、「特定日と特定日の翌日の運転時間の平均」が(9時間20分+8時間50分)÷2=9時間5分となる。
結果、「特定日の前日と特定日の運転時間の平均」と「特定日と特定日の翌日の運転時間の平均」のどちらも9時間を超えており、改善基準に違反している。
ウ.連続運転時間の違反の有無
連続運転時間は、4時間を超えてはならない。
連続運転時間が改善基準に違反しているかどうかは、運転開始後4時間以内又は4時間経過直後に、30分以上の「運転の中断」をしているかどうかで判断する。
つまり、“「30分以上の運転中断」をした時点で連続運転がリセットされる”ということであり、「30分以上の運転中断」をする前に運転時間の合計が4時間を超えてしまった場合、改善基準に違反することになる。
なお、この「30分以上の運転の中断」については、少なくとも1回につき10分以上とした上で分割することもできる。
また、「運転の中断」とは、「運転を行っていない時間」のことなので、休憩だけでなく荷積みや荷下ろしの時間も含まれる。
設問ア及びイで計算した運転時間を当てはめると、運転状況は以下のようになる。
復路におけるD地点出発後の運転状況を見ると、〔運転3時間⇒運転中断20分(E地点での荷下ろし) ⇒運転1時間20分⇒A営業所帰庫〕となり、「30分以上の運転中断」をする前に運転時間の合計が4時間を超えている(=4時間20分)。したがって、連続運転時間が4時間を超えているため、改善基準に違反する。
問30 正解2
※本問のような「事故の再発を防止する対策として最も直接的に有効なもの」を選ぶ問題については、問題で問われている「最も直接的に有効な内容のもの」を考えるより、逆に「事故の原因とは直接的に関係ない内容のもの」を削除していった方が解答しやすい。
ア 〈事故関連情報〉によると、月1回ミーティングを実施していたものの、交通事故を惹起した場合の社会的影響の大きさや、疲労などの生理的要因による交通事故の危険性などについて理解させる指導・教育が不足していたことがわかる。したがって、本肢のような指導を行うことは、同種事故の再発防止対策として直接的に有効である。
イ 休息期間は勤務終了後に継続8時間以上与えなければならない。しかし、〈事故関連情報〉によると、事故日前日の積雪の影響により終業が早朝5時になり、事故当日は正午に出庫しているので、この間は7時間しか空けておらず、休息期間は8時間未満であることがわかる。さらに、事故日前1ヵ月間の勤務において、拘束時間・休息期間について複数回の改善基準違反があったことも考慮すると、本肢のような指導を行うことは、同種事故の再発防止対策として直接的に有効である。
ウ 〈事故関連情報〉によると、この営業所では、補助者が選任されておらず、運行管理者が不在のときは点呼が実施されていなかったとあるものの、事故当日は、アルコール検知器を使用し対面による業務前点呼が行われていた。したがって、同種事故の再発防止対策として、直接的に有効であるとはいえない。
エ 〈事故関連情報〉によると、本事故を起こした運転者は、初任運転者に対する適性診断(初任診断)を受診していなかったとあるが、本事故は、初任診断を受診していなかったことが原因で生じた事故ではない。したがって、同種事故の再発防止対策として、直接的に有効であるとはいえない。
なお、本事故により死者や重傷者が生じていることを考慮すると、事故惹起運転者に対する適性診断(特定診断)を受診させることは、同種事故の再発防止対策として有効であるとも考えられるが、肢ウ、オ、クの内容は、明らかに同種事故の再発防止対策として直接的に有効であるとはいえないので、選択肢の組み合わせから判断することも可能である。
オ 〈事故関連情報〉によると、本事故を起こした運転者は健康診断を年2回受診しており、また、本事故は、運転者の疾病が原因で生じた事故ではない。したがって、同種事故の再発防止対策として、直接的に有効であるとはいえない。
カ 衝突被害軽減ブレーキの性能(※問27の肢4参照)を考慮すると、本肢のような指導を行うことは、同種事故の再発防止対策として、直接的に有効である。
キ 本事故の原因が運転者の「居眠り運転」であったことや、肢イの解説にあるように休息期間が8時間未満の状態で乗務していたことを考慮すると、事故当日の運転者は、疲労が蓄積された状態であったと考えられる。したがって、本肢のような指導を行うことは、同種事故の再発防止対策として直接的に有効である。
ク 〈事故関連情報〉によると、当該トラックは、日常点検・定期点検を実施しており、また、本事故は、速度抑制装置の誤作動などが原因で生じた事故ではない。したがって、同種事故の再発防止対策として、直接的に有効であるとはいえない。
以上により、同種事故の再発を防止するための対策として、最も直接的に有効と考えられる組合せは、ア・イ・カ・キとなり、肢2が正解となる。