運行管理者試験過去問題 - 令和3年度CBT試験 出題例(貨物)解答・解説
令和3年度CBT試験 出題例(貨物)解答・解説
問24 正解 A5 B7 C3
運転者に対する点呼の際は、運転者ごとに点呼を行った旨、報告、確認及び指示の内容など所定の事項を記録することとされているが、具体的には以下の通りである。
上記項目と設問の記録表の項目を比較すると、空欄Aには「指示事項」、空欄Bには「疾病・疲労・睡眠不足等の状況」、空欄Cには「運転者交替時の通告内容」が入ることがわかる。
※上記の記録事項を正確に覚えていなかったとしても、前述したように、点呼の記録には、「報告、確認及び指示の内容」を記録しなければならないので、安全規則7条1項~3項に規定されている内容を覚えていれば、以下のように考えて解くことも可能である。
運転者に対する業務前点呼では、「酒気帯びの有無」、「疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無」、「日常点検の実施又はその確認」について報告を求め、及び確認を行い、並びに事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な指示を与えなければならない。
したがって、空欄Aには「指示事項」が入る。
運転者に対する中間点呼では、「酒気帯びの有無」、「疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無」について報告を求め、及び確認を行い、並びに事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な指示をしなければならない。
したがって、空欄Bには「疾病・疲労・睡眠不足等の状況」が入る。
運転者に対する業務後点呼では、「当該業務に係る事業用自動車、道路及び運行の状況」について報告を求め、かつ、「酒気帯びの有無」について確認を行わなければならない。この場合において、当該運転者が他の運転者と交替した場合にあっては、「当該運転者が交替した運転者に対して行った法令の規定による通告」についても報告を求めなければならない。
したがって、空欄Cには「運転者交替時の通告内容」が入る。
問25 正解3
1.適切でない。交通事故を起こした場合、直ちに運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。したがって、本肢のような場合、まず最初に負傷者を救護し、道路における危険の防止、警察への報告など必要な措置を講じた後に運行管理者に連絡すべきである。
2.適切でない。他の自動車に追従して走行するときは、自車の速度と停止距離に留意し、前車との追突等の危険が発生した場合でも安全に停止できるような車間距離を保って運転するよう指導する必要がある。
「停止距離」とは「危険を認知してから停止するまでに走った距離」のことであり、空走距離(=危険を認知しブレーキ操作を行い、ブレーキが効きはじめるまでに走った距離)と制動距離(=ブレーキが効きはじめてから止まるまでに走った距離)とを合わせた距離をいう。
安全な車間距離の目安は、一般的に「停止距離以上の距離」とされており、「制動距離と同程度の車間距離」では、急ブレーキの際に前車に追突する危険がある。
4.適切でない。飲酒により体内に入ったアルコールの処理時間については、アルコール5%のビール500ミリリットル場合、概ね4時間が目安とされている。
問26 正解2,3
1.適切でない。健康診断個人票は、5年間保存しなければならない。
4.適切でない。運行管理者は、乗務員等の健康状態の把握に努め、疾病等により安全に運行の業務を遂行することができないおそれがある乗務員等を事業用自動車の運行の業務に従事させてはならない。本記述のような場合、運行再開の可否については、運転者の体調を考慮した上で運行管理者が判断すべきであり、運転者が自ら判断し決定するよう指導することは適切ではない。
問27 正解1,2
3.適切でない。(2)の記述が適切ではない。四輪車を運転する場合、二輪車は速度が実際より遅く感じたり、距離が遠くに見えたりする特性がある。
4.適切でない。ハンドルを左に切り旋回した場合、左側の後輪が左側の前輪の軌跡に対し内側を通ることとなり、この前後輪の軌跡の差を内輪差という。大型車などホイールベースが長いほど内輪差が大きくなる。
問28 正解 A1 B1 C2 D1
1.自動車の夜間の走行時において、自車のライトと対向車のライトで、お互いの光が反射し合い、その間にいる歩行者や自転車が見えなくなることを(A=蒸発現象)という。
2.自動車がカーブを走行するとき、自動車の重量及びカーブの半径が同一の場合に、速度を2分の1に落として走行すると遠心力の大きさは(B=4分の1)になる。
3.長い下り坂などでフット・ブレーキを使い過ぎるとブレーキ・ドラムやブレーキ・ライニングなどが摩擦のため過熱することによりドラムとライニングの間の摩擦力が減り、制動力が低下することを(C=フェード現象)という。
4.自動車が衝突するときの衝撃力は、車両総重量が2倍になると(D=2倍)になる。
問29 正解2,2,1
1.C料金所~D料金所間の高速道路の運転時間を2時間と設定したことについて
「C料金所~D料金所間(200km)を、設定された運転時間(2時間)で走行できるか」を考えるが、「車両総重量が8トン以上又は最大積載量が5トン以上のトラック」が高速道路の本線車道を走行する際の最高速度は時速90kmとされており、本運行で使用する自動車も該当する。(※「〇以上」は、「〇を含み、その上の範囲」という意味である)
以上を踏まえ、以下(1)~(3)のいずれの解法で正誤判断してもよい。
〇解法(1)※走行距離から正誤判断
時速90kmで2時間走行した場合、90km/h×2時間=180kmなので、設定時間では180kmの距離しか走行できない。
〇解法(2)※運転時間から正誤判断
200kmの距離を時速90kmで走行する場合、200km÷90km/h≒2.3(2.22…)時間、これを「分」に変換すると2.3時間×60分=138分(2時間18分)なので、運転時間を2時間18分以上に設定しなければ設定時間内に走行できない。。
〇解法(3)※平均速度(時速)から正誤判断
200kmの距離を2時間で走行する場合、200km÷2時間=100km/hなので、時速100km以上で走行できなければ設定時間内に走行できない。
したがって、C料金所~D料金所間の運転時間を2時間と設定したことは適切ではない。
2.運行当日を特定日とした場合の2日を平均した1日当たりの運転時間の違反の有無
1日の運転時間については、2日を平均し1日当たり9時間を超えてはならない。
1日の運転時間の計算に当たっては、特定の日を起算日として前後2日ごとに区切り、その2日間の平均を算出し、「特定日の前日と特定日の運転時間の平均」と「特定日と特定日の翌日の運転時間の平均」が、ともに9時間を超えている場合は改善基準に違反していることになる。(※「どちらも9時間を超えていない場合」や「どちらか一方だけが9時間を超えている場合」は違反にはならない!)
以上を踏まえ、まず、運行当日の運転時間を算出するが、運転時間は「距離÷時速」で求めることができるので、運行当日の運転時間は以下のように求める。
(往路の運転時間)
・A営業所~B地点:20km÷30km/h=2/3時間=40分(※1)
・B地点~C料金所:5km÷30km/h=5/30時間=1/6時間=10分(※2)
・C料金所~D料金所:2時間(※問題図より)
・D料金所~E地点:5km÷30km/h=5/30時間=1/6時間=10分(※2)
(復路の運転時間)
・E地点~F地点:30km÷30km/h=1時間
・F地点~G地点:90km÷30km/h=3時間
・G地点~A営業所:40km÷30km/h=4/3時間=1と1/3時間=1時間20分(※3)
各運転時間を合計すると8時間20分となる。
したがって、前日の運転時間が9時間20分(※問題文より)、当日の運転時間が8時間20分であり、翌日の運転時間は9時間20分(※問題文より)を予定しているので、「特定日の前日と特定日の運転時間の平均」が(9時間20分+8時間20分)÷2=8時間50分、「特定日と特定日の翌日の運転時間の平均」が(8時間20分+9時間20分)÷2=8時間50分となる。
結果、「特定日の前日と特定日の運転時間の平均」及び「特定日と特定日の翌日の運転時間の平均」どちらも9時間を超えておらず、改善基準に違反していない。
3.連続運転時間の違反の有無
問22の解説にもあるように、連続運転時間は4時間を超えてはならない。
なお、「運転の中断」は、原則として「休憩」を与えることとされているる。
設問2で求めた運転時間を当てはめると運転状況は以下のようになる。
往路については、4時間以内の運転(40分+2時間20分=3時間)後にE地点で1時間の休憩をしているので問題ない。
しかし、復路については、まず1時間の運転後にF地点で30分の休憩をしているので、ここまでは問題ないが、その後、休憩をせずに合計4時間20分(3時間+1時間20分)の運転をしているため、改善基準告示に違反している。
問30 正解3
※本問のような「事故の再発を防止する対策として最も直接的に有効なもの」を選ぶ問題については、問題で問われている「最も直接的に有効な内容のもの」を考えるより、逆に「事故の原因とは直接的に関係ない内容のもの」を削除していった方が解答しやすい。
ア <事故の概要>によると、事故発生時、当該道路の最高速度は時速50kmに制限されていたにもかかわらず、当該トラックは時速80kmで走行していた。また、<事故関連情報>によると、月1回ミーティングを実施していたものの、交通事故を惹起した場合の社会的影響の大きさや疲労などの生理的要因による交通事故の危険性などについて理解させる指導・教育が不足していた。したがって、本肢のような指導を行うことは、同種事故の再発防止対策として直接的に有効である。
イ <事故関連情報>によると、事故当日は、対面による業務前点呼が行われていた。したがって、同種事故の再発防止対策として直接的に有効であるとはいえない。
ウ 勤務終了後の休息期間は9時間を下回ってはならないが、<事故関連情報>によると、事故日前日の積雪の影響により終業が早朝5時になり、事故当日の正午にはすでに業務を開始しているので、明らかに休息期間が9時間未満であることがわかる。さらに、事故日前1ヵ月間の勤務において、拘束時間・休息期間について複数回の改善基準違反があったことも考慮すると、本肢のような指導を行うことは、同種事故の再発防止対策として直接的に有効である。
エ 衝突被害軽減ブレーキは、レーダー等で検知して前方の車両等に衝突する危険性が生じた場合に運転者にブレーキ操作を行うよう促し、さらに衝突する可能性が高くなると自動的にブレーキが作動し、衝突による被害を軽減させるためのものである。ただし、同装置が正常に作動していても、走行時の周囲の環境によっては障害物を正しく認識できないことや、衝突を回避できないこともあるので、本肢のような指導を行うことは、同種事故の再発防止対策として直接的に有効である。
オ <事故関連情報>によると、本事故を起こした運転者は定期健康診断を年2回受診しており、また、本事故は、運転者の疾病が直接的な原因で起きた事故ではない。したがって、同種事故の再発防止対策として直接的に有効であるとはいえない。
カ <事故関連情報>によると、当該トラックは日常点検・定期点検を実施しており、また、本事故は、速度抑制装置の誤作動が直接的な原因で起きた事故ではない。したがって、同種事故の再発防止対策として直接的に有効であるとはいえない。
キ 本事故の原因が運転者の「居眠り運転」であったことや、肢ウの解説にあるように休息期間が9時間未満の状態で乗務していたことを考慮すると、事故当日の運転者は疲労が蓄積された状態であったと考えられる。さらに、<事故関連情報>によると、業務前点呼の際に睡眠不足等の運転者の体調確認を行っていなかった。したがって、本肢のような指導を行うことは、同種事故の再発防止対策として直接的に有効である。
ク <事故関連情報>によると、本事故を起こした運転者は、初任運転者に対する適性診断(初任診断)を受診していなかったとあるが、本事故は、初任診断を受診していなかったことが直接的な原因で起きた事故ではない。したがって、同種事故の再発防止対策として直接的に有効であるとはいえない。
なお、本事故により死者や重傷者が生じていることを考慮すると、事故惹起運転者に対する適性診断(特定診断)を受診させることは、同種事故の再発防止対策として有効であるとも考えられるが、肢イ、オ、カの内容は、明らかに同種事故の再発防止対策として直接的に有効であるとはいえないので、選択肢の組み合わせから判断することも可能である。
以上により、同種事故の再発を防止するための対策として、最も直接的に有効と考えられる組合せは、ア・ウ・エ・キとなり、肢3が正解となる。